-
3月28日よみうりGENKIフェスタ… 雨天ながらも順調な来場者数
2021.04.02
「よみうりGENKIフェスタ2021」(主催:読売新聞東京本社、特別協賛:SAPIX)が3月28日、終了しました。個別相談会の参加者の総数は8,561人(学校・企業・運営関係者と再入場者を含む)で、セミナーへの参加者の総数は293人でした。個別相談会とセミナー参加者の合計は、8,854人になります。日中は雨で天候は思わしくありませんでしたが、順調な人出となりました。 今回は初めての完全事前予約制での実施でしたが、個別相談の時間帯枠・セミナーすべてが大人気で、事前予約では定員を超えていたために全部が抽選となりました。当日も開場時間前より来場して待たれている方や、個別相談とセミナー両方に参加する方も多く、イベントの注目の高さが伺えました。 また、出展している参加校からは、「予想以上に集客できている」「熱心な来場者が多く話に盛り上がった」など高評価が聞かれました。 来年3月も予定されていますが、コロナ禍が終息に向かえば次年度は更に来場者も出展校も増加が見込まれ、国内でも最大級の中学・高校進学イベントになることが期待されます。 <実施セミナー> ●【特別座談会】開成・灘と考える「ウィズ・コロナ」時代の教育 野水勉氏 開成中学校・高等学校 校長 和田孫博氏 灘中学校・高等学校 校長 コーディネーター:髙宮敏郎氏 SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表 ●12歳は、偏差値より学習歴!!〜できちゃいましたフツーの学校〜 宝仙学園中学校・高等学校共学部理数インター ●広尾学園 学校説明会 広尾学園中学校・高等学校 ●私学の魅力 発見セミナー 【女子校】桜蔭、豊島岡女子学園 【男子校】浅野、海城、桐朋 【共学・東京】慶應義塾中等部、渋谷教育学園渋谷 【共学・千葉】市川、渋谷教育学園幕張、東邦大学付属東邦 <参加校数> ブース出展:146校 資料 参加:38校
-
高まる中高一貫校人気 先行き不安な時代に「早く準備したい」
2021.01.28
異例の状況下で始まった首都圏の中学受験。入試日程・内容の変更、会場での感染防止対策などさまざまな不安を抱えながらも、志望校合格を目指す受験生たちの戦いは熱い。不確実な時代に「教育だけは良いものを」と考える保護者が増え、中学受験熱は高まるばかりだ。今や東京では4人に1人、都心部では2人に1人が中学受験をしているというデータもある。高まる中高一貫校人気の背景と学校選びのポイントを探る。 都内4人に1人が受験低年齢化する入塾時期 緊急事態宣言のただ中、首都圏の中学受験がピークを迎えつつある。昨春の小学校休校による学習の遅れや入試内容の変更など、コロナ禍による不安材料はあるものの、私立を中心とする中高一貫校の人気は相変わらず根強い。 実際、全国でどのくらいの子どもたちが中学受験に挑戦するのだろうか。文部科学省の「学校基本調査」(2020年度)によると、中学校に通う1〜3年の生徒321万1219人のうち、8・4%に当たる26万9796人が国立、もしくは私立の中学校に通っている(表1参照)。地域差が大きいので、全国集計ではそこまで多いようには見えないが、都道府県別に見ると、最も多い東京都では全体の26・0%、実に4人に1人が私立、もしくは国立中学の生徒だ。 表2から東京都についてさらに細かく見てみよう。東京都の調査(20年度)では、都内の公立小学校の卒業者のうち21・8%、区部では26・9%が国立や都立、私立の中学校や中等教育学校、あるいは都外の中学校に進学している。その割合が最も多いのは港区の48・9%。ほとんど差なく文京区(48・8%)や中央区(46・5%)が続く。ほぼ2人に1人が地元の公立中学校には進学していないことになる。 受験にかかる費用や時間の負担は決して少なくない。にもかかわらず、中学受験をする子どもがこれほど増えているのはなぜか。その背景にあるのは、第一に難関大学への合格実績だ。高校別合格者数ランキングを見ると、多くの難関大学で名門の私立中高一貫校が上位を占めている。もともと優秀な生徒が集まっているという背景もあるが、高校受験のない6年間を通したカリキュラムの下、先取り学習や早めの受験対策など、着実に難関大学合格に向けた力をつけられる利点は大きい。 「大学進学を考えれば中高一貫校」、そう考える層が多いのは、大学付属校の人気が高まっていることでもわかる。大学付属の中高一貫校なら、一定の条件を満たせば内部推薦で大学まで進むことができる。その魅力は大きい。 特に私立の場合、施設や設備の充実度が高いことも魅力だ。特に最近注目度が高いのが、パソコンをはじめ各種情報通信端末を教室や授業に取り入れて活用するICT(情報通信技術)環境だ。多くの私立校はその整備を積極的に進めてきた。実際、今回のコロナ禍による長期休校のなか、スムーズにオンライン授業に切り換えられた学校の多くは、ICT教育を進めていた私立の学校だった。こうしたところに私立の魅力を感じた人も少なくないだろう。緊急事態にも柔軟に対応した実績は、今まで中学受験を考えていなかった層にも響いたといえよう。 中学受験熱の高まりを受け、進学塾に通う子どもも増えている。国立教育政策研究所の「全国学力・学習状況調査」(17年)によれば、小学生で塾に通っている子どもの割合は約46%。2人に1人が塾で勉強していることになる。 塾に通い始める時期も早くなっている。現在、首都圏で中学受験を目指す場合、新4年生、つまり小学3年生の2月から塾に通い始める子が最も多いといわれる。受験するかどうかは別として、塾にだけは早めに入っておこうと考えるケースも多い。 低学年で入塾を希望するケースが増えてきたため、新たに小学1、2年生向けのコースを設置する塾もある。コロナ禍のなか、最近はオンラインでの受講を選択できる塾も増えてきた。こうした傾向も、中学受験人気を後押しすることにつながるだろう。 多様な私立中学一貫校まずは違いを知ること 人気が高まる中高一貫校だが、一口に中高一貫校といっても多種多様だ。目指すなら学校の特徴をよく理解し、本人の希望や保護者の価値観に合った志望校を選ぶことが大切だ。 中高一貫校は大きく私立校と国立・公立校に分けられる。私立校は建学理念や教育方針、校風、カリキュラムなどに各校の特徴が明確に表れている。自主性を重んじる自由な校風の学校もあれば、規律を重んじ礼儀やマナーを身に付けさせる学校もある。教養重視の観点から幅広い教科を学ぶことに力を入れる学校もあれば、グローバル社会を考えて英語教育や海外研修に力を入れる学校もある。 国立校はほとんどが大学の教育系学部の付属校だ。その特徴は、最新の研究から生まれた質の高い教育が受けられるところにある。経済的負担が少ないことも大きな魅力だ。学費が抑えられる点は、最近増えている公立の中高一貫校も同じだ。そこでは、適性検査によって、学校が求める資質を持った生徒を集め、高いレベルの教育を行っている。 私立の場合はさらに、付属校か進学校か、男子校・女子校か共学校かに分けられる。私立の付属校は国立と違い、併設大学に内部推薦で入学できる点が魅力だ。大学受験を気にせず興味あることに打ち込むことができ、併設大学と連携した授業や研究活動なども可能だ。付属校のなかには、他大学への進学に力を入れている学校もある。併設大学に希望の学部がない場合や、より難関の大学を目指したい場合には好都合だ。また付属校に近い形態で、別の法人が運営する「系属校」と呼ばれる学校もある。学校によって、提携している大学への推薦枠は異なるので注意が必要だ。 こうした学校以外、併設大学がない学校は「進学校」と呼ばれる。生徒の多数が大学を受験するが、付属校などと違い進学先に制約がないため、海外も含め幅広く進路を選択できるのが特徴だ。 私立は男女別学の学校が多いため、共学にするか別学にするかも検討する必要がある。男子校・女子校の最大の魅力は、男女の成長段階の違いが出やすいこの時期に、それぞれの特性に合わせた効果的な教育を行えるところにある。伝統ある名門校は別学が多く、確固たる教育方針の下に質の高い教育を行っている。ただ近年は別学から共学に移行する学校が増えている。新設される学校もほとんどが共学で、受験対策に力を入れ、高い大学合格実績を示す学校も見られる。 確かな情報を集め慎重な志望校選びを 偏差値や進学実績が同じような進学校でも、また同じ大学系列にある付属校でも、教育内容はそれぞれ異なる。そのなかからわが子に合った最適な学校選びをするには、情報を取捨選択して、確かな情報を集めることが重要だ。学校情報はあふれている。インターネットで検索すれば、口コミも含めていくらでも出てくる。その中には真偽が確かめられない情報も多い。そうした情報に惑わされることのないよう、まずは学校のホームページや学校案内パンフレットなど、学校が発信する公式情報源で確実な情報を集める必要がある。 校風や雰囲気を知るためには、学校説明会や学校行事に足を運ぶことも大切だ。文化祭を見学して、子どもが「この学校に入りたい」と思ったことが、受験勉強のモチベーションになったという例は多い。 とはいえコロナ禍の今、学校に出向くのは難しくなっている。その代わりに、ほとんどの学校はオンラインでの説明会や相談会を実施している。複数の学校を集めた合同のオンライン説明会を開催するところもある。 保護者のなかには、パソコンの操作やインターネット活用に慣れていない人もいるかもしれない。しかし、コロナ禍であるか否かにかかわらず、これからの学校選びにパソコンやインターネットの活用は必須だ。入学後に実施されるかもしれないオンライン授業のことを考えても、慣れておく良い機会といえる。 小学校の6年間と中学・高校の6年間は全く異なる。6年間の中等教育期間は人間性を確立する最も重要な時期といわれる。その大切な6年間をどう過ごすかは、その後の人生に大きく関わってくる。わが子の希望、そして将来を踏まえ、充実した学校生活を送ることができる最適な学校を選びたい。 ■日本経済新聞 朝刊 第二部「広告特集 中学受験特集」2021年1月29日掲載
-
中高一貫教育の「今」を知る注目のキーワード
2021.01.28
情報化、グローバル化の進展により、昨今の教育は大きく様変わりし、中・高の枠を超えた多様な取り組みが続々登場している。新しい流れをイメージしやすいように、最近教育業界で注目を集める5つのキーワードを取り上げる。 ICT教育 2019年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」は、児童生徒1人1台のコンピューターを標準化し、高速大容量の通信ネットワーク整備を目指している。一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む学びを、全国の学校現場で実現させるというものだ。 20年4月から3年間かけて、全国の小・中学校でICT(情報通信技術)化を実現するという当初の計画は、昨年春の新型コロナウイルス感染症拡大による臨時休校を受けて、一気に加速した。ICTやオンライン学習は、子どもたちの学びの保障に大いに役立つと多くの人が実感したのではないだろうか。 私立の中高一貫校のなかには、早い段階からICT化を進めている学校が少なくない。例えば三田国際学園中学校・高等学校は、15年に戸板中学校・高等学校から現校名に改称・共学化したのを機にICTを活用した教育改革を推進。生徒全員がタブレット端末を持ち、コミュニケーションを拡張させたり、自分の考えや思考を飛躍させたり、プログラミングを通じて創造力を伸ばしたりしている。基礎学力の定着のために、朝学習では人工知能(AI)を活用した確認テストも実施しているという。 また鷗友学園女子中学高等学校では、高校生を対象に、自分の使い慣れたタブレット端末やスマートフォン、ノートパソコンなどを学校に持ち込んで使用する「BYOD(ブリング・ユア・オウン・デバイス)」を18年に導入。授業だけでなく、課外活動や委員会活動などさまざまな場面で活用しており、生徒たちはまるで文房具のようにデバイスを自在に使いこなしている。 ICT環境が整った学校では休校期間中の対応も速やかで、日々の学びが停滞することはなかったようだ。今後の教育革新を進める上で、ICT化が重要なカギであることは間違いないだろう。 アクティブラーニング アクティブ・ラーニングとは「能動的・活動的な学習」のこと。教員が生徒に対して一方的に知識伝達をする授業ではなく、体験学習や課題研究、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなど、生徒の能動的な学習を取り入れた教育活動の総称だ。大学の教育改革が進むなかで取り入れられるようになり、現在では小・中・高校など多くの教育機関に広がっている。 アクティブ・ラーニングが注目されている背景には、グローバル化や情報化といった社会環境の変化がある。これからの子どもたちには、知識を増やすだけでなく、自ら学ぶ力や時代の変化に対応できる力が求められる。さらに、明確な答えのない課題に向き合い、他者と協働しながら解決に導く力も必要とされている。能動的に学習することで、これらの力を養うわけだ。 首都圏にはアクティブ・ラーニングに積極的に取り組んでいる学校が数多くある。栄東中学・高等学校では、これを教育の根幹と位置づけている。教科指導、校外学習、学校行事、キャリア教育のすべてで生徒の主体的取り組みを重視。大学受験だけでなく、その先を見据えた教育を展開している。 田園調布学園中等部・高等部では、2014年に独自の「協同探求型授業」を導入。「数学× 理科」などの教科横断型授業や理科実験の分析考察などで効果を上げる。生徒たちは学んだ知識を活用しながら、調べる、話し合う、発表するという活動を通じて、思考力・表現力・主体性などを培おうとしている。 グローバル教育 現代の教育で重要性を増すグローバル教育。外国語の学習だけではなく、国・人種・文化などが異なる人々と交流する過程で、世界が抱える問題について学び、その解決方法を「国際社会の一員」として考えることを促すものだ。国境を越えた交流が当たり前となった現代では、外国語でコミュニケーションを取りながら、さまざまな背景を持つ人間と、相互理解を深められる人材の育成が急務となっている。 各学校では、短期・長期留学をはじめ、海外提携校の学生を招待してイベントを開いたり、海外で活躍する著名人の講演会を行ったりするなど、それぞれの持ち味を生かした取り組みを行っている。海外大学への進学を目標に掲げる学校も多く、「海外で学ぶ」という選択肢が当たり前のものになりつつある。 例えば渋谷教育学園渋谷中学高等学校は、多くの帰国生が在籍していることでも知られている。休み時間には、英語で談笑する声が聞こえてくるなど、非常に国際色豊かな学校だ。一般入試で入学した生徒たちは、帰国生との交流を通して、異なる言語や文化に触れ、自らの知見を深められる。日々の学校生活のなかで、国際理解を自然に育めるのは、大きなアドバンテージといえるだろう。 広尾学園中学校・高等学校も、早くからグローバル教育に力を入れてきた。インターナショナルコースではほぼすべての授業を英語で行い、国内外の一流大学への進学を目指す。高度な専門性を持った外国人教員も多く在籍しており、日本にいながら、本格的なグローバル教育を受けられる。2020年には、78人の生徒が海外大学に合格し、同校のグローバル教育の質の高さを証明している。 新型コロナウイルス感染症の影響により、海外への渡航が制限され、留学制度の活用が難しくなっている。そんな状況下でも、各校は「日本にいながら取り組めるグローバル教育」の形を模索し続けている。 SDGs ここ数年、「SDGs」という単語をよく見るようになった。持続可能な開発目標(Sustainable development Goals)の略称で「地球環境を守りながら、すべての人が平和で豊かに暮らせる世界を2030年までに実現する」のが目標だ。15年9月の国連総会で採択され、格差の解消や気候変動への対策といった17の目標と、その目標内に設定された全169のターゲットで構成されている。現在、先進国を中心に、これらの目標を達成するための取り組みが行われている。 例えば日本でも、環境分野では「50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、グリーン社会を実現する」という目標を掲げている。しかし日本の20年度のSDGs達成度は、166の国と地域中17位。上位10カ国は、欧州の国が占めている。政府・企業・国民が一丸となって、これまで以上に鋭意推進していくことが求められている。 SDGsへの取り組みは、中学・高校でも行われている。例えば文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール」に指定されている豊島岡女子学園中学校・高等学校では、中3の探究学習「SDGsについて考えよう」で、ジェンダー平等を実現する方法や、人や国の不平等をなくす方法などについてグループで考察し、その成果を発表し合った。世界のさまざまな課題に対して問題意識を持つ、非常に良いきっかけとなったという。 富士見中学校高等学校でも、高1の探究活動の授業でSDGsを取り上げている。生徒たちは17の目標のなかから興味のあるものを選択し、その目標に関連した国内外の問題についてグループで話し合う。解決に向けたアイデアを出す過程で培われるのは、明確な答えが出せない問題に真摯に向き合う姿勢だ。 環境破壊や経済格差など、わたしたちの生活にも密接に関わる数々の問題。「地球市民」として広い視野を持つことが、解決への糸口となるだろう。 高大連携 高校と大学が連携し、さまざまな学習指導を行う高大連携は、高い意欲を持つ人材育成の観点から注目を集めている。大学付属校をはじめとした学校では、大学教員による専門性の高い授業の実施や、大学設備の一部開放などが行われている。特定の分野に関する高度な学びに触れることで、将来の夢を見いだす生徒も少なくない。 文科省も高大連携のさらなる促進に向け、さまざまな提案や留意点などをまとめている。大学からの一方的な支援ではなく、高校と大学、双方にメリットのある具体的な連携方法を確立するためにも、まず教員同士が相互理解を深め、交流・連携ネットワークを構築することが重要だとしている。 高大連携で成果を上げている学校の一つに東京農業大学第一高等学校中等部がある。同校では、隣接した東京農業大学の研究施設を利用し、大学教員の指導の下、農作物の観察や分析などを行う。また、大学レベルの内容を含む80回以上ものバリエーションに富んだ実験を行い、生徒の知的好奇心を大いに刺激している。 明治大学付属明治高等学校・中学校も、高大連携を重要視しており、高校生を対象とした「高大連携プログラム」を展開している。高2では、進路指導の一環として「高大連携講座」を実施。明大の教員が毎週2時間、年間を通して授業を行う。明大の10学部すべての学部紹介と、各学部の専門的な内容にも踏み込んだ講座となっており、生徒は幅広い知識を獲得できる。また、この講座が進路選択のきっかけとなる生徒も多く、高い意欲を持って大学へ進学する動機づけに一役買っている。 付属校のみならず、各進学校でも取り入れられ始めている高大連携。これからの発展がますます楽しみな分野だ。 ■日本経済新聞 朝刊 第二部「広告特集 中学受験特集」2021年1月29日掲載
-
現代的な問題への意識を高めておこう
2021.01.25
首都圏の中学入試受験者の数は約4%増加し、リーマンショック以前の状況まで回復しました。東京の小学校6年生の人口が増加したことに加え、大学入試改革への対応や、新学習指導要領に対応した教育への期待感から、中学受験人気が再び高まっているとみていいでしょう。ここ数年来、大学受験対策をしっかりやっている中堅校や、有力私大の付属校や系属校に受験生が集中しているのも、こうした変化が切迫感を持って受け止められているからです。 一方で、受験生が集中して倍率が高くなっている人気校を避け、教育の特色をよく研究した上で、倍率の割に進学実績の高い学校へ出願する傾向も強まっています。出願日を前倒しした学校や、午後入試を実施する学校への人気が高くなっているのも、進学することを前提として受験し、早めに合格を決めてしまいたいという受験生や保護者の心理があらわれた結果といえます。 新学習指導要領では、知識を理解することよりも、学んだことを表現したり活用したりする力が求められていますし、大学入試改革もその方向で進められています。そのため、学校選びでは学校と子どもの相性に加えて、PBLや探究型の授業がどれくらい実施されているかといった観点も重視する必要があります。中学入試では、気候変動や移民問題など現代的なテーマを扱う問題が増える傾向にありますが、それは、基本的な知識に加え、現代的な問題を自分なりに考え、表現できる力が求められているからです。受験に向けた基本的な学習に加え、新聞やテレビなどで話題になっている問題を家族や友人と話したりして、意識を高めておくことが必要です。 森上 展安氏 【プロフィール】 早稲田大学法学部卒業後、進学塾塾長などを経て、1988年に私立中・高や学習塾を対象とするコンサルタント「森上教育研究所」を設立。現在は同研究所の代表を務める一方、受験や中高一貫教育についての豊富な情報と経験を生かし、評論・分析の分野でも活躍。ほぼ毎週、中学受験の保護者を対象に、著名講師陣による「わが子が伸びる親の『技』研究会」(oya-skill.com)を動画配信している。 ■朝日小学生新聞 2020年2月27日掲載