私立の中高一貫校を中心に、各学校のホームページに、必ずと言っても過言ではないほど掲載されているのが、大学への合格実績です。
今回は、中学受験をする上での志望校選びをする際に、大学受験を見据えた方が良いのかを中心に、解説していきます。
<目次>
2.エリアによって違う? 大学合格実績が与える中学受験への影響
1.志望校を選ぶ際に、合格実績をどう捉えるべきか
私立の中高一貫校では、ホームページ上に、大学の合格実績が必ずと言っても過言ではないほど記載されています。
それほどに、大学の合格実績が、各私立学校が公表できる、数少ない学校自体の成績としての役割を果たしているのが現状です。
大学受験では、各大学の偏差値帯に合わせて、私立では早慶上智、GMARCH、日東駒専などの呼称が使われる括りがなされているのは皆さんもご存知のことと思います。
この、各大学の偏差値帯にどれだけの合格者数を出しているかで、その私立学校の中学入試における人気度合いや偏差値に影響を与えているのが現状です。
そのため、偏差値や人気の高い国公立大学や医学部・歯学部・薬学部、早慶上智やGMARCHへの合格者数がどのくらいなのか、また、その学校で合格者が多いのはどの偏差値帯の学校なのかということが、私立の中高一貫校のブランド力にも直結しています。
各私立学校が、大学の合格実績を公表するのは、その学校のブランド力を高め、さらなる優秀な生徒に受験し入学をしてもらうためには、必須のことだと言えます。
一方、これに当てはまらないのが、大学附属の中高一貫校です。
大学附属の中高一貫校は、外部の大学を受験させる進学校化している学校を除いて、基本的には大学の付属校として位置づけられているため、その大学に進学することが前提となっています。
こうした大学の付属校は、大学の合格実績ではなく、どこの大学の附属であるかということが、その学校の偏差値や人気度合い、ブランド力を決めます。
そのため、大学の合格実績は公表する必要がないため、公表されていないことが多くなっています。
大学の付属校の場合は、どの学部に進学することができるかが重要となります。
2.エリアによって違う? 大学合格実績が与える中学受験への影響
大学の合格実績が、その学校の偏差値や人気度合い、ブランド力に大きな影響を与えているのは先程もご説明したとおりです。
しかし、これはエリアによって温度差が生じています。
例えば、戦前に創立された学校や、高度経済成長期に創立された学校など、50年以上の長きにわたって運営されている学校が多い、東京都や神奈川県の私立中高一貫校では、古くからの伝統が作り上げてきたブランド力があります。
このブランド力は、大学の合格実績とは別で、長年学校として運営されてきた年数によって作り上げられているため、簡単に崩れることはありません。
そのため、志望校選びに保護者だけではなく、祖父母も関わられるご家庭の場合は、直近の大学の合格実績ではなく、昔からのイメージで学校の候補が出てくることもあります。
また、埼玉県の私立中高一貫校では、1980年代以降に作られた、創立から50年前後となっている学校が多くなっており、東京都や神奈川県に軒を連ねる100年以上の歴史を持つ伝統校と比べると、歴史が浅いと判断される学校が多くあります。
そのため、埼玉県の私立中高一貫校では、有名大学への合格実績がその学校の偏差値や人気度合い、ブランド力に大きな影響を与えています。
埼玉県の私立中高一貫校で、大学の合格実績が大きな影響を与えているのはこのためなのです。
千葉県の私立中高一貫校は、地元に根づいた学校が多くなっており、大学の合格実績よりは、その学校の特徴が重視される傾向にあります。
近年は、理系教育に力を入れる学校が増えており、千葉県の学校では、理系に強い生徒が排出され、人気が高まってきていると言えます。
3.6年後の大学受験を考える上で、準備しておくこととは
中学受験すら終わっていないのに、もう大学受験を考えるなんて、と思われる保護者の方も多いと思います。
ところが、中学・高校の6年間は、思ったよりもあっという間に過ぎてしまうのです。
そのため、中学受験をするタイミングから、大学受験をどうしていきたいか、ということをある程度念頭に置いて、志望校選びを行っていく必要があると言えます。
ご家庭の方が医師や弁護士などの専門職出ない限り、多くのご家庭では、大学受験を考えようとすると、真っ先に頭に浮かんでくるのは、学部ではなく大学名なのではないかと思います。
しかし、大学受験だけでなく、大学そのものが多様化した時代に変化しています。
その中で、大学名だけを追い求めることが、必ずしも将来が安泰であるとは言えない時代に突入してしまっているのです。
そのため、東京大学に入ったから、慶応大学に入ったから、将来が保証されていますとはならないご時世にあります。
何のために中学受験をするのか、を考えたときに、自分の子どもが将来、世界で通用するスキルを身に着け、生活に困らないでほしいということに主眼を置くのであれば、大学名よりも大学で何を学ぶのか、つまり、学部のほうが重要になります。
このことは、大学入試での各大学の偏差値にもあらわれています。
例えば、同じ大学でも、学部によって偏差値が最大10も違うというのはよくあることです。
偏差値が10違うと、例えばある学部なら早慶上智レベルの大学に入れる偏差値でも、別の学部にするとGMARCHレベルになる、何ていうことも起こっています。
大学名だけを重視するのではなく、どの学部に入って、どんな学習を大学の中で行っていくのかということが、今後の社会で求められることであると言えるでしょう。
そのため、大学名だけではなく学部も気にしていく必要があります。
4.まとめ
中学受験の志望校選びは、子どものその後の人生を大きく左右する選択となります。
それだけに、その学校を出たあと、大学進学はどうするのか、大学を出たあとどうなって欲しいのかということまで考えた上で、志望校を選んでいく必要があります。
最も大切なことは、子ども本人が幸せに人生を送れることです。
名のある大学に行くことよりも、どんな勉強をしに大学へ行くのか、そのためにはどの学校を志望校とすることが近道になるのか、ということを考えて、志望校選びをすることが、子ども本人が1番幸せな人生を送ることができる選択であると言えるでしょう。
一方で、子どもの頃に描いていたシナリオ通りに進学ができるとも限りません。
中学校や高等学校の家庭を学習する上で、得意な教科や不得意な教科ははっきりと分かれていきます。
中学受験をするときには医師を目指したいと思っても、理系教科が苦手になってしまうということもあるでしょうし、弁護士を目指したいと思っても、文系教科が苦手になってしまうということもあるでしょう。
そんなときに、軌道修正をすることができる環境がその学校にあるのかどうかを確認しておくことも、失敗しない学校選びにおいては、とても重要であると言えます。
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中嶋 雅樹(なかじま まさき)
WEBサイト WILLナビ塾 ライター&編集
首都圏を中心に展開する中学受験塾で7年以上勤務後、金融機関に4年勤務
2級ファイナンシャル・プランニング技能士