1.受験料だけでも、10万円超えの予算を
6年生になると、ぜひとも進学したい第一志望校のほか、「入学するかもしれない」併願校も定まってくるでしょう。
それに伴い保護者としては、6年間通わせるための費用についてもしっかり考えておく必要があります。
中高6年間の学費の前に、中学受験をするためには、受験料と入学金がかかります。
私立校では一般的に、1回の受験につき2~3万円の受験料が求められます。
受験料は出願時に納めますが、入試日を複数回設定している学校では、申し込み段階で2回3回と受験を申し込む受験生について、割引制度を設けている学校もあります。
近年の受験生の動向では、1人あたりの出願数は5~6校。首都圏では、1月に行われる埼玉県や千葉県の学校を2校程度、2月の東京都と神奈川県の学校を3校程度出願するのが一般的です。
出願数は各家庭の方針により異なりますが、4~5校に出願すると10万円程度はかかる見込みに。
さらに、後半の日程では、その日までの合否結果によって次の受験校を変更できるように、同じ日に複数の学校に出願しておく〝ダブル出願〟を行うことも。
その場合は、さらに多くの受験料がかかります。
入試日の1か月前あたりから出願を開始する学校が多いので、12月から1月にかけての出費として予算を立てておきましょう。
2.第一志望校と併願校の兼ね合いで、入学金の予算は変わる
入学金(入学手続時納付金)は、入学手続きの際に納めるのが一般的です。
その額はおおよそ20~40万円。入学する学校は1校なので、その学校の定める額を用意すればいいと思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。
たとえば、第一志望校の合格発表より前に、合格を得ている第二志望校、第三志望校が入学手続きを締め切ってしまう場合には、念のためそちらの学校にも入学金を納める必要があるからです。
1月に入試を行う埼玉県や千葉県の私立校のなかには、「多くの受験生が東京や神奈川の学校も併願する」ことを前提に、入学手続きの期間を2月校の発表後に設定している学校も少なくありません。
しかし、それらの学校も、遅くとも2月5日・6日辺りが締め切りの最終日。
なかには、都内や神奈川のトップ校の合格発表が重なる2月3日を締め切り日にする学校もあるので、「結果次第では」の備えを万全にして、手続き等のスケジュールを組みましょう。
3.入学後にかかる費用は、授業料だけではない
入学する学校が決まったら、その後に払うのは授業料です。
授業料は学校によって年間数十万円以上の大きな開きがあるので、各校のホームぺージや入学案内などでしっかり確認しておきましょう。
さらに授業料のほかにも、施設費や修学旅行積立金、教材費といった諸経費も納める必要があります。
私立校のなかには、「任意の額で」「1口10万円を3口以上」といったように、寄付金を求める学校も少なくありません。
東京都が発表する「令和3年度 都内私立中学校の学費の状況」 によると、授業料は48万2,168円。
入学金25万9706円、施設費3万7881円などを含めると初年度納付金は総額で97万176円と、初年度は100万円経度の費用がかかることがわかります。
一方、大阪私立中学校高等学校連合会の発表した「令和3年度大阪私立中学校新入生徒 納付金等調査」によると、大阪府の私立中学校の入学金は10万~30万円、授業料等もほとんどの学校が65万円程度と、関西圏でも東京と大差がないことがわかります。
4.私立の中高一貫校6年間の学習費の総額は公立の約2.5倍
文部科学省が平成6年より隔年で実施している「子供の学習費調査」での平成30年度の調査結果によると、子ども1人当たりに保護者が支出した1年間の学習費用(学校教育費・学校給食費・学校外活動費)は公立の場合、中学校では48万8397円、高等学校では45万7380円でした。
対して私立では中学が140万6433円、高等学校が96万9911円。
私立の中高一貫校に6年間通わせるとなると概算では713万円ほどかかる計算で、中高ともに公立に通わせる場合と比較すると約2.5倍の費用が必要になります。
さらに、徒歩や自転車などで通学できる地元の公立校に比べ、電車やバスを利用して通うとなると通学定期代もばかになりません。
また近年、私立校の多くは、学年全員参加の海外語学研修旅行などを設定していて、欧州やアメリカなどが行先の場合には30~40万円かかることもあるようです。
また、高校くらいになると、大学受験に備え、塾や予備校に通う人も少なくありません。
その費用も頭に入れておく必要もあります。郊外の学校を中心に、放課後や長期休暇中に受験対策の特別講座を設けたり、予備校と連携しての進学指導を行ったりと、〝学校完結〟での手厚いサポート体制を敷いている学校もあります。
こうした講座の充実度や在校生の通塾率などについては説明会で確認しておいたほうがよいでしょう。
5.入学金や授業料が免除される特待生制度のある学校も
私立進学校校の人気を決める一番の要素は、なんといっても大学合格実績です。
国公立大学や最難関私立大学、医学部医学科への合格実績を伸ばしている学校は、例年たくさんの受験生を集めます。
学校側としては「優秀な生徒」に入学してもらえれば、6年後の大学合格実績は大いに期待できるものになります。
そこで進学校のなかには、入学金や授業料を免除する特待生制度を設ける学校も多くあります。
たとえばトップクラスの進学校である渋谷教育学園幕張、渋谷教育学園渋谷、広尾学園なども特待生制度のある学校です。
受給される内容や条件は学校ごとに異なります。
一般的には入試の成績上位者に対して、入学金や1年間の授業料の一部もしくは全額を免除。
なかには、宝仙学園共学部・理数インターのように得点基準を示して、S特待(入学金・施設費・授業料年額)、A特待得点(入学金・施設費・授業料半額)、B特待(入学金・施設費)と、免除の特典を分ける学校もあります。
選抜方法も学校ごとに異なり、一般入試の成績上位者を選ぶ場合と、特待生を選抜する入試を一般入試とは別日程で設ける場合があります。
埼玉県の栄東中学校「東大特待」、開智中学校の「先端特待」などが特待生選抜入試に当たり、合格者は全員が特待生として入学できます。
いずれにしても、特待生として合格するには高得点が要求されますが、学力に自信のある受験生であれば、受験を検討する価値はあるのではないでしょうか。